緊急メッセージ

緊急メッセージ

NPO 法人日本ホスピス緩和ケア協会 理事長 志真 泰夫

はじめに

新型コロナウイルス感染症が拡大し、世界規模で危機的な状況が生じています。 日本においても、時々刻々と状況は変化しており、政府から全国すべての地域を対象に 4 月17 日〜5 月6 日まで「緊急事態宣言」が出されました。新型コロナウイルスの感染者の 急速な増加という、私たちが今まで経験したことのない危機的な状況の中で、 私たちは何ができるかが問われています。日本ホスピス緩和ケア協会はこの危機的な状況に どう対応すればよいのか、会員のみなさんと共に考え、行動を呼びかけます。

今、目の前にある危機的な状況を認識する

私たちは、急速な新型コロナウイルス感染症の拡大に対して、次の3つの認識を共有したいと思います。

1.私たちが毎日診療やケアを行っている患者さんが、そして私たち医療従事者のすべてが、 新型コロナウイルス感染症
  に罹患する可能性があること
2.私たち医療従事者の現在の目標は、医療体制の崩壊をどう防ぐか、そのためにそれぞれの臨床現場で 集団感染をどう
  防ぐか、ということ
3.そして、この危機的な状況の下で私たちホスピス緩和ケアに携わる者が、いま何をすべきか、 これから何ができるか、
  が問われていること

日々のケアと業務を見直し、これからに備える

1.新型コロナウイルス感染症のリスクを減らす
どこのホスピス緩和ケアの臨床の場でも、できるだけ質の高いケアを提供するために、限られた人員の中で 精一杯の努力をされていることと思います。しかし、いまの危機的な状況の下では、通常時と同じケアを 提供しようとするよりも、非常時のケアに切り替えることが大切です。
そして、私たち自身に体調変化があった時、迷わずその日からいったん休むことができるようにケアの 提供方法に少し余裕を持たせることが大事です。それが集団感染のリスクを減らすことにつながります。

2.非常時に備えて、ケアの目標とやり方を変える
勤務できるスタッフが減少した場合を想定して、業務を見直すことが必要です。また、 お互いの感染予防のためにチームが集まって対面で行うカンファレンスや回診を減少・中止したり、 チームメンバーの一人が感染しても全員が自宅待機にならずにすむようにスタッフを少人数のチームに 分割したりする工夫も必要です。在宅では訪問回数を減らすことや、自宅からの直行直帰を 原則にする必要もあるかもしれません。そして、ホスピス緩和ケアを必要とする人たちに、 病院で、そして在宅で、ケアを提供し続けることを目標としましょう。

3.困難な中でこそ「つながり」が大切である
病院では、新型コロナウイルス感染症対策のためにご家族の面会が制限されたり、禁止されたりしています。 しかし、ご家族との「つながり」は、患者さんにとって大きな力であり、慰めです。 社会的距離を取ることが感染予防の基本だとしても、困難のなかで生きていくためには、 患者さんとご家族をこれまでとは異なる方法でつなぎ、「つながり」を感じられるよう 工夫することが必要であり、とても大切です。

4.今こそ、これまでに培ったものを活かす
ホスピス緩和ケアの臨床で、患者さんとご家族をケアの一つの単位としてとらえ、 患者さんの抱える全人的苦痛にしっかりと対処する様々な技術と能力を私たちは培ってきました。 この危機的な状況において、患者さん、ご家族、同僚、そして自分自身に対しても、 私たちが培ってきたものをそれぞれの場で活かしましょう。

おわりに

現在の状態は非常事態であり、大災害とも言える危機的な状況です。地域のニーズに応えるために ホスピス・緩和ケア病棟の役割を一時返上した、という知らせが協会に届いています。胸が痛みます。 この大災害のなかで、私たちができることを、これまでの役割に限定せずに大きく変えていかざるを 得ないかもしれません。そんな状況でも前を向いて、一歩一歩、共に歩んでいきましょう。

NPO法人
日本ホスピス緩和ケア協会

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