コロナ禍における緩和ケア病棟での面会に関する新たな提案
感染対策と緩和ケアを両立するために

日本ホスピス緩和ケア協会
2020年11月 9日

基本的な考え方

 昨年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は、今年3月以降、日本でも著しい感染の流行拡大をきたし、 病院や高齢者・福祉施設では集団感染が多発しました。4月7日に政府は「緊急事態宣言」を発出し、 社会活動全般において人と人の接触機会をできるだけ減少させることを求めたため、 病院や高齢者・福祉施設では面会を一時禁止する方針が提示されました。
 日本ホスピス緩和ケア協会(以下、協会とします。)では、患者・家族の意向を尊重しつつも新型コロナウイルス感染症流行による緊急事態下での感染対策を重視し、 緩和ケア病棟でも院外からの家族の直接の訪問をできるだけ制限する考え方を4月末に提案しました。 その後、国内の状況はやや改善し、「緊急事態宣言」は5月25日に解除されました。 しかし、地域によっては感染流行の再拡大への懸念から、緩和ケア病棟での面会制限の継続を余儀なくされています。 面会制限によって患者と家族の直接の交流が行えないことは、緩和ケアを希望する患者と家族にとって大きなストレスとなっています。 スタッフは感染対策と緩和ケアの両立に苦慮し、面会制限に対する家族からの苦情やクレームへの対応に追われているとの報告も寄せられています。
 こうした状況において最も必要なことは、患者と家族、そしてスタッフがお互いに直面している苦難と課題を理解するために話し合いを行い、 共に歩んでいくために信頼関係を築くことです。協会は、緩和ケアに携わるスタッフがこれまで培ってきた、 解決し難い問題についてコミュニケーションをとり苦難と課題を共有する力を活かし、感染対策と質の高いケアの両立を目指して現場での話し合いを推進することを提案します。

具体的な対応

→ 院内で感染対策を担当する部門の関係者と緩和ケアを担当する関係者の話し合いを持ち、 緩和ケアにおける家族の役割について理解を求めましょう。自施設が果たすべき役割と地域の感染の状況を踏まえながら、 患者と家族の交流ができるだけ保たれるような感染管理の方法を検討しましょう。

→ 面会制限下で行うべき患者と家族へのケアのあり方をスタッフで話し合いましょう。 すなわち、患者・家族・スタッフ間のコミュニケーションを維持する方法(対面、電話、オンラインなど)とその担当者、 スケジュールなどを決めるとともに、共有すべき情報と課題(患者の容態、患者の希望、家族の心情、希望や気持ちのずれ、 今後のケアの方針など)について確認しましょう。

→ 家族とスタッフが面会制限のあり方について話し合う場を設定しましょう。 まず、患者と家族の状況と心情を聞き取り、それぞれの家族の独自性や関係性を理解しましょう。その上で、 病院における新型コロナウイルス感染症の集団感染のリスクを説明し、病院で定めた感染対策への協力を求めるとともに、 その家族に対して行うことができるケアについて話し合いましょう。

→ 地域において、著しい感染の拡大流行期となった場合には、人と人の接触をできるだけ減少させることが求められるため、 面会を行う家族を登録制とすることや、面会人数、回数や時間をより厳しく制限することを考慮する必要があります。 「新型コロナウイルス感染症流行期における緩和ケア病棟への面会の基本的考え方」(5月2日改訂) https://hpcj.org/info/menkai.htmlを参考としてください。

NPO法人
日本ホスピス緩和ケア協会

[事務局] 〒259-0151
神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1000-1 ピースハウスホスピス教育研究所内
TEL 0465-80-1381
FAX 0465-80-1382